製造業の新人IT研修、何を教える? ― 2時間の研修を自社で設計・実施してみた

こんにちは、Onsite Solution の村上です。

普段は岡山で、製造業のDX・IT活用のお手伝いをしています。今日はシステムの話ではなく、人の話。先日、製造業の現場に新しく入ったメンバー向けに、2時間のIT研修を設計して実施しました。その中身と、やってみて感じたことを書きます。

「新人へのIT教育、何をどこまで教えればいいのか分からない」——これ、製造業の人事・総務の方からよく聞くお悩みです。同じ悩みをお持ちの方の参考になれば嬉しいです。

ExcelやWordの「前」に教えるべきことがある

IT研修というと、つい「Excelの使い方」「Wordの使い方」から入りたくなります。でも今回はあえて、特定のソフトの操作は一切教えない構成にしました。

理由はシンプルで、どんなソフトを使うときにも共通して必要になる “土台” が先だからです。土台がないままExcelを教えても、ファイルの保存場所が分からなくなったり、怪しいメールの添付を開いてしまったり、肝心なところでつまずきます。

組み立てた2時間のカリキュラムはこんな構成です。

パート内容時間
第1部Windows PCの基本操作と便利機能40分
第2部ビジネスメールの基本30分
第3部セキュリティの基礎30分
第4部PCトラブルシューティング20分
第5部AIの活用方法30分
確認テスト全12問・その場で採点—

第1部:PCの仕組みと「ショートカット」で作業は劇的に速くなる

最初に、PCという機械そのものの話をしました。CPU・メモリ・ストレージの役割を、「作業する人の頭脳」「作業机の広さ」「引き出しの数」 にたとえて説明すると、「PCが遅い」「容量がいっぱい」の意味がすっと入ります。仕組みがわかると、トラブルのときに自分で状況を説明できるようになるんですよね。

そして一番力を入れたのが ショートカットキー。マウスで右クリック→コピー→右クリック→貼り付け、とやっていた操作が Ctrl + C / Ctrl + V で一瞬になる。Ctrl + Z で失敗を取り消せる。Ctrl + S でこまめに保存できる。Win + Shift + S で画面を撮って共有できる。

ショートカットは「覚えた数だけ、毎日の作業が速くなる」投資です。 1回あたりは数秒でも、1日に何十回・何百回と繰り返す操作なので、積み重なると劇的な差になります。研修では実機で手を動かしながら、「これだけは」という数個に絞って体に入れてもらいました。

第2部:ビジネスメールは「型」と「作法」

メールは我流になりやすい領域です。件名の付け方(【ご確認】【ご依頼】を先頭に)、宛名・挨拶・結びの型といった基本に加えて、今回特に丁寧に説明したのがこの2つです。

  • 引用の作法 … 返信を重ねると >>>> が増えて読みづらくなるので、回答に関係する行だけを残して、あとは署名ごと削除する。シンプルな返事なら引用なしでもいい
  • 添付ファイルの上限 … メールの添付には上限があり、大きすぎるファイルは相手のサーバーに拒否されて届かないことがある。「送ったのに届いていない」事故はだいたいこれ。大きいファイルは共有フォルダやファイル転送の仕組みを使う

どちらも「知らないと誰も教えてくれないまま、相手に迷惑をかけ続けてしまう」類のものです。最初に型を渡しておくのが一番の近道だと思います。

第3部:セキュリティは「実際に起きた事件」から教える

セキュリティ教育って、「パスワードは複雑に」「怪しいメールは開かない」とルールを並べるだけだと、正直どこか他人事になりがちです。

そこで今回は、日本で実際に起きた事件を教材にしました。

  • 職員が業務連絡を装ったメールの添付を1つ開いただけで、約125万件の個人情報が流出した事件
  • USBメモリを1本なくしただけで、全市民46万人の個人情報が危険にさらされた事件

そのうえで、「もし自分の会社で同じことが起きたら?」を一緒に想像してもらいます。取引先の図面や注文データが暗号化されて開けなくなったら。納期が止まったら。お客様への報告と謝罪に追われることになったら——。ニュースの中の出来事が、自分の1クリックと地続きであることが伝わると、聞く姿勢が明らかに変わりました。

対策はシンプルなものに絞っています。強いパスワード、離席時の Win + L、心当たりのない添付は開く前に確認。そして一番大事なのは 「もしもの場合の動き方」 です。

やってしまったときは、怒られることより会社が止まることの方が大きい。だから隠さず・すぐ・報告する。 事故そのものより「報告が遅れること」が被害を広げる——ここは研修の中で何度も繰り返しました。

同じ製造業のみなさんへ

近年、DX・AXとテクノロジーは目まぐるしく進化しています。経営層は新しいものを取り入れるのに必死で、SE・システム担当はそれに応えるのに必死。その結果どうなるかというと——実際に使う現場スタッフのリテラシーが追いつかないまま、「なんとなく」でシステムが使われ続ける。そんな光景、心当たりはないでしょうか。

せっかく導入したツールが本来の半分も活用されない。入力ルールが徹底されずデータが荒れる。ちょっとしたトラブルのたびに作業が止まり、特定の「詳しい人」に負荷が集中する。システムが悪いのではなく、使う側の土台とシステムの進化のスピードがかみ合っていないのです。

だからこそ、このタイミングであえて 「基礎の基礎」から学び直すことには大きな意味がある と考えています。

  • 道具は、使う人の理解度までしか力を発揮しない。 土台ができると、既存のシステムの活用度が上がり、次に新しいツールが来たときの吸収も速くなる
  • セキュリティは、一番弱いところから破られる。 高価な対策製品よりも、全員が「1クリックの重さ」を知っていることの方が効くことがある
  • 「わかって使う」人が増えると、改善の声が現場から出はじめる。 DXが上から降ってくるものから、現場と一緒に進めるものに変わっていく

新しいものを追いかける手を少しだけ止めて、足元の土台を整える。遠回りに見えて、これが一番の近道かもしれません。

Onsite Solution では、システムづくりだけでなく、こうした IT研修・教材づくりの内製支援 もやっています。「うちの会社に合わせた研修をつくりたい」というご相談も、いつでも お気軽にご相談ください。

それでは、また 💻


読んでいただき、ありがとうございます。
気になることがあれば、お気軽にどうぞ。