バーチャル工場見学は自社で作れる ― 製造業のDXとして360°ツアーを内製してみる

こんにちは、Onsite Solution の村上です。

普段は岡山で、製造業のDX・IT活用のお手伝いをしています。今日は最近じっくり調べていた バーチャル工場見学 について、技術的な中身と会社としてのソロバン勘定の両面から書きます。

「工場を見てもらう」ことは、ものづくりの会社にとってすごく強い一手です。採用の学生さんに現場の空気を伝えたい。遠方のお客様に設備を見てほしい。展示会で自社の実力を一目で伝えたい。——でも、そのたびに足を運んでもらうのは、お互いなかなか大変です。

そこで、360°カメラで現場をまるごと撮って、ブラウザ上を“歩き回れる”バーチャル工場見学 を作れないか。しかも外注ではなく 製造業のDXの一環として自社で内製できないか、という視点で本気で調べてみました。実際に動くサンプルまで作ったので、同じ製造業の方の参考になるよう、仕組みとコスト感を具体的に書きます。

そもそもバーチャル工場見学は何でできているのか

まず、公開されている製造業のバーチャルツアーをいくつか実際に開き、中の仕組みを解析してみました。結論から言うと、多くは 360°パノラマツアー という方式です。

やっていることは、意外とシンプルでした。

  • 各地点(入口・製造ライン・検査室・休憩室…)を360°カメラで 球状の写真 として撮る
  • 専用ソフトで地点どうしを 矢印(ホットスポット) でつなぐ
  • 「HTML5ツアー」として書き出すと、HTML・JavaScript・画像だけ の一式ができる
  • それを自社のサーバーに置き、ホームページに埋め込むだけ

ポイントは、特別なサーバー機能もデータベースも要らない こと。実体は“静的なファイルの集まり”なので、いま会社で使っているサーバーにそのまま載せられます。月額のクラウド費用が増えるわけでもありません。ここが分かった時点で、「これは内製でいける」と手応えを感じました。

ちなみに老舗の制作ツールとして有名なのが Kolor Panotour Pro 系(内部エンジンは krpano)ですが、Panotour はすでに開発終了。いま新規で作るなら後継ツールか、後述のオープンソースになります。

使えるツールを具体的に:OSSと市販ソフト

「どのツールで作るか」は、予算と作り込みたい度合いで選べます。実際に候補を調べ、リンクとともに整理しました。

市販の定番ソフト(買い切り・GUIで作りやすい)

  • 3DVista Virtual Tour PRO … 動画・音声・マップ・VRまで全部入り。GUIで直感的。買い切り約7〜8万円。日本の制作会社でも定番 → 3dvista.com
  • Pano2VR PRO … Panotour の実質的な後継。軽量・高速・買い切り約3〜4万円 → ggnome.com/pano2vr
  • krpano … プロ向けエンジン本体。XMLで自由度は最高だが上級者向け → krpano.com

今回選んだのは無料のOSS

私は表示部分を Photo Sphere Viewer というオープンソース(MITライセンス・無料・商用OK)で組んでみました。公式はこちら → photo-sphere-viewer.js.org

実際に手を動かして、市販ソフトに引けを取らないこれだけの機能が動くことを確認できています。

  • 矢印で歩いて移動 … 床の矢印をクリックして隣の場所へ進む、あの没入感
  • 図面(間取り図)から移動 … フロアマップ上の地点をクリックしてジャンプ
  • 現在地+視線レーダー … 図面上に「いま自分がどこを、どの方向で見ているか」を扇形で表示
  • 説明ポップアップ … 設備や工程に、解説パネル・写真・動画・リンクを重ねられる
  • サムネイル一覧・自動回転・スマホのジャイロ操作・VRゴーグル対応

Photo Sphere Viewer で内製した360°バーチャル工場見学ツアーの試作画面(矢印移動・フロアマップ・現在地レーダー)

来場者が迷わず回遊できて、要所要所で「これは何をしている設備か」がちゃんと伝わる。動画を差し込めば、就業風景や接客の様子を1〜2分の“見学ツアー感”で見せることもできます。サーバー処理が要らない静的構成なので、表示も速く、故障のリスクも小さい のが技術的にも気持ちいいところです。

撮影機材:360°カメラは1台あれば始められる

撮影に使うのは360°カメラ1台と三脚だけ。今回は写真も動画もバランスよく撮れる Insta360 X4 を選びました(メーカー公式 → insta360.com)。ボタンひとつで全方位を撮影でき、つなぎ合わせ(スティッチング)は自動。もちろん RICOH THETA シリーズなども有力な選択肢です。実機が届いたら、使い勝手もこのブログでレポートする予定です。

外注か、内製か ― 会社としてのソロバン勘定

ここが一番お伝えしたいところです。バーチャルツアーを制作会社に外注すると、規模にもよりますが 1ツアーで数十万〜百万円規模 が一般的。しかもレイアウト変更や新設備の追加で撮り直すたびに、また費用がかかります。

一方、内製した場合のざっくりした初期費用はこんなイメージでした。

区分内容目安
360°カメラ高解像度の1台+三脚約7〜13万円
制作ソフト買い切り(OSSなら0円も可)0〜8万円
公開先サーバー既存サーバーを流用ほぼ0円
初期合計おおむね15〜20万円前後・月額なし

一度そろえてしまえば、2本目・3本目のツアーは追加のソフト費0。新しいラインができたら自分たちで撮り直して差し替えるだけです。これは単なるコスト削減の話ではなく、「現場を見せる資産」を自社で持ち、育てていける ということ。製造業のDXって、こういう“内製できる状態”を少しずつ増やしていくことだよなと、あらためて感じました。

いま考えている構想

調べるだけでなく、実際に動くサンプルまで作ってみました。いま構想しているのは、こんな進め方です。

  1. 段階的に作る … まずは主要な3〜5地点だけの小さなツアーを試作し、方向性を確認。そのうえで全工程+動画+音声ガイドまで作り込む
  2. ナビは“迷わせない”を最優先 … 矢印移動・図面クリック・現在地レーダーを併用し、初めての人でも直感的に回れるように
  3. 一つの素材を多目的に使い回す … 採用サイト、遠方商談、展示会でのVR、さらには 新人向けの安全教育 まで。一度撮った360°素材は、いろんな場面で効いてきます

特に「採用」と「安全教育」は、多くの製造業さんが同じ悩みを抱えている領域だと思います。バーチャル工場見学は、その両方に効く一石二鳥(三鳥)の投資になり得ます。

続きはまたこのブログで

いまは実際の撮影に向けて、360°カメラの到着を待っている段階です。カメラが届いたら試し撮り、シナリオ設計、試作ツアーの制作…と進めていきます。その過程で分かったこと・つまずいたことも、この製造業DXブログで随時レポートしていきます。 ぜひ続きも見にきてください。

同じ製造業のみなさんへ

「うちの現場も、もっと外に見せたい」「でも外注は高そうだし、何から手を付ければ…」——もしそう感じておられるなら、バーチャル工場見学を内製するという選択肢は十分に現実的 です。カメラ1台と、ちょっとの工夫があれば始められます。

Onsite Solution では、こうした「自社でできる製造業DX」を、現場に寄り添いながら一緒に考えています。バーチャル工場見学に限らず、「これってうちでもできる?」のご相談、いつでも お気軽にご相談ください。

それでは、また 🏭


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